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うつつ世とまどろみの境を泳ぐ、とある妖の手記・・・らしいもの
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執務室に舞い込む、見慣れた白い一枚の羽根。そこに書き付けられた回収成功の報。
動いたことに満足できる瞬間。

呪竜・・・命なき命。崩壊のために創造されし、腐臭湛える破壊神。
其らに心あらば何を想う?

夜半過ぎの伝達。独断の指示。助力及ばず崩れ去った王城。
遺憾。 
・・・いや、まだ次にやることが在る筈。

燃えるような真紅を纏う、優しき悪魔。
その艶やかなる笑顔を、曇らせぬためにも。



 
始まりは夜半過ぎの来訪者。
小さな龍人・・・・・・自らの姿を模した式神が、眠りに落ちていた彼の頬を叩いていた。
ぼやける視界にその姿を見止め、深緑の髪の青年・伽藺は、異変を察した。

「其は、ジェラ姫に贈った・・・」

トラテペス王・闇姫ジェラルディン。交流会にて彼女に贈った自らの分身。
それが何故、ここに?

「ジェラ姫に・・・トラテペスに、何か!?」

ばっと蒲団から飛び起き、自らの似姿を取った人形をひっ掴むと。
居城の居間に据え付けてある、魔道力伝話鏡の前に座り、そのキィを叩きはじめた。
伝話鏡づてに、あらためて自国が同盟を組んでいる国の国王を紹介される。

(・・・あぁ)

かつて、多少の荒事を演じた相手。
すこし微笑い。寝巻の上に羽織った上掛けの、胸元を直す。
「失礼、このような姿で。月国民部の伽藺と申す」
礼節を崩さぬように、初めて会ったかのような顔で、接する。
多分先方も、同じような心持ちでいるのだろう。
無論、自分らの過去の確執など、中継役である姫君は知りはしない。

・・・そう。これが戦争。これが外交。
国家レヴェルの大事の前には、個人間の確執など。



塵にも等しい。



そして、独断ではあるが対策を高じることを先方国の王に約束し。
彼は伝話鏡のスィッチを落とした。
慌てて王宮勤務用の執務服に着替え、弾かれたように外へ飛び出す。

城下を走る・・・冷たく乾燥した空気が、のどに少し痛い。
と、目に止まるのは月光にぼうと照らされた。
白翼の少年・・・。
『鳥』の割に、深夜の散歩が好きな彼が歩いていること自体は、何ら不思議はないのだが。
今宵は何やら様子が違うようであった。

直感的に。
この夜が、いつもと違う空気を纏っていることを感じているのだろうか。
子供と大人の、ちょうど中間地点に属する少年らしい、その鋭敏な感覚で・・・。
彼に問われ。
先ほど仕入れたばかりの情報を伝える。

『大罪』を負うことを了とした者たちが、呪いの丘に祈りを捧げることによって、
産み出される腐肉纏う死せる竜。

その報を聞いた少年は、一瞬総毛立ち。
それからひとつ、情報についての礼を告げると。
背に在る大きな翼をはためかせ、飛び去っていった。

「・・・・・・」

武運を祈る言葉をかける暇もなく。

見つめていても仕方がない。
自らの役目を果たすため、青年も再び走りはじめた。



王宮民部執務室に入り、会議室に大々的に指示を打ち出す。
大きくは間違っていないかとは思うが、国王不在時の全くもっての独断行動である。
もし1箇所でもミスがあれば、大問題にも繋がりかねない。
告知をする唇が震える。
これは恐怖?

・・・・・・違う。

身体の震えと同時の体温上昇、そしてどうしようもなく、頬は紅潮する。
ああ、自分は今、まさしく。
不謹慎なことではあるが。
高揚している。

震えをおさえつつ、伝話鏡を開くと。
待ち構えていたかのように、旅に出ている妹(?)からの入伝があった。

「兄! お手伝いできることはないか!?」

そういって伝話鏡の中の彼女が見せたものは、両手いっぱいの消費アイテム。

「何かしたいの・・・。あの8月、月が戦場になった時から、ずっと」

確かその時も彼女は手に一杯のアイテムを持って、周囲の民に築城を呼びかけていた。

「承知。受け取り手を探そう」

鏡の中の顔が、桜色に染まる。
仕事を増やしてしまったな、と彼は小さく苦笑した。

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自己紹介
HN:
伽藺(カリン)・クイン
性別:
女性
職業:
アッシュ医師の妻/ナハリ軍務補佐官
趣味:
家事、お茶、お喋り
自己紹介:
医師アッシュ・クインの妻である柳の樹妖。
外見年齢は20歳ほど、実年齢は20代後半。
夫との間に男女の双子あり。

性格はおっとり。
行動は良く言えば優雅、悪く言えばどんくさい。
少し急ぐとすぐ転ぶ。
ネバーランド・ナハリ国の軍務省にも補佐官として所属している。

ユエルティートという名の少女を、小鳥と思い込んでペットとして飼っていたことがあり、
人の姿を現した今でも、娘代わりとして可愛がっている。
義兄にはウィルフェア氏とティーラ氏。氏の家族や同居人諸氏とも懇意で、何かとお世話になっている。

お茶が大好きでお茶菓子も好き。
甘党で大食漢。カロリーコントロールを言い渡されるレベル。
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