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うつつ世とまどろみの境を泳ぐ、とある妖の手記・・・らしいもの
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(2005年9月~10月において、OLキャラクターとその伴侶氏と交わした、伝言内で書いたSSより編集。
NL世界で魂のみの存在となった伽藺が、OL世界の鳥人の少年・遊雅の身体を借りるまでの経緯)

◆2005.9.29.

あぁ まただ・・・

暗闇の中に ぼんやりと浮かぶ 白い影
其れはじっと無言で こちらを見つめている
その表情は 微笑んでいるが どこか淋しげで
オレは・・・

押し潰されそうな プレッシャーを感じる

「何なんだよ・・・アンタ」
問い掛けても 其れは答えない ただ淋しそうな
笑顔を向けるのみ
「・・・消えろよ」
呟くと少し 困ったような様子を見せ 申し訳なさそうに
それは薄れて消滅する
・・・そうしてオレは やっと息をつく
隣では心配そうに 顔を覗き込むソル
『また・・・なのかい?』
そう問われているような気がして こくりと頷いて見せる
そして胸にしがみ付き 何とか眠りに落ちる


転生してから・・・だ
鳥人だった頃とは違い いわゆる
『通常では 見えないもの』まで 見えるように
なったのは

その殆どが『精霊界』に属するもので
たまに そうじゃないのだろうと いうものも
見えたのだけれど
大抵は オレの『見える』ものくらいなら
ソルの目には 必ずといっていい程 見えていた
(これは精霊の『格』の 違いなのだろうと思う)
けれど『それ』だけは違うようだった
オレにしか見えない・・・ 近くにソルがいても・・・

ソルいわく 『それ』が居ると オレが言う場所にも
空間的な歪みは 見当たらないよう だったから
『それ』はその『場所』に 存在しているのではなく
遠い場所より オレの精神にダイレクトに メッセージを
送っているのでは という事だった

・・・その『影』が 誰なのかは分かっている
オレはかつてそいつに 接近した事がある
純粋な『興味』で もって・・・


◆2002.10.18.

かつて オレの師匠が言っていた
『オマエはおれの 従弟に似ている』
師匠がオレを拾ったのも それがあるから放って
おけなかったって 部分があったらしい
その言葉に興味を抱いて オレはその『従弟』とやらを
尋ねていった事がある

とある洋風の城に 設営された 倭風の甘味茶屋
そこの店主が彼だった
ぱっと見て分かった・・・
柔らかく流れる深緑の髪 穏やかに揺れる蒼紫の瞳
・・・師匠によく似ている
けど オレに似ているとはあまり 思えなかった
真っ直ぐ落ちる 少し硬質な蒼い髪
時に 鋭いとさえ評される 紅の瞳
輪郭も体格も すべてが鋭角で構成されたような
オレに比べソイツは 生来柔らかさを身に纏って
生まれて来たんじゃないかと 思えるようなヤツだった

長身な所も師匠とソックリで・・・
確かに手足は 細く長かったが それはオレのように
元から細いというのではなく 寧ろ骨格はしっかりして
いた
ただ不健康なまでに 肉が薄いことと 顔色が悪い所が
師匠とは違う繊細さを 醸し出していたのだが・・・
かといって小食な訳でもない
寧ろひっきり無しに 菓子などを食していた

そして端正な面立ちを 有していたが
決して女性的であったり する訳ではなく・・・
声も低く ゆったりと流れるような 話し方をしていた 
ともすれば少女と 間違えられる事もある オレとは
やっぱりどこを取っても 『似て』はいない気がした・・・
何故 師匠がオレと『似ている』と いうのか
ぱっと見た限りでは オレには全く分からなかった



少し近付いて 茶屋で茶と菓子を所望しながら
旅の途中なのだが 宿が決まっていないと 言ってみた
思った通り 彼は部屋を貸そうと言って来た
・・・そういうタイプだと思った
かくして一晩 オレは彼の『アトリエ』を 宿泊所として
借りることになった
彼は画家でもあるらしく 結構な広い部屋を アトリエとして
有していた

その晩 彼にそれとなく 身の上を聞いてみた
過去はあまり 思い出したくないらしく 多くを語る事は
無かったようだけれど 話の端々に師匠の名が出て来た
その話し口から察するに 師匠と彼は幼い頃から仲が良く
今でも機会があれば 会いたいと思っている ようだった
ただ・・・
師匠の方は実は 彼を避けていることを オレは知っていた
詳しい理由は知らないが・・・
(師匠曰く 『昔の罪』の具現化であるから
幸福は切に祈っているが 実際に顔を会わせるのは怖いとか
言っていた)

夜も更けた頃・・・
寝床を用意しようとする彼に 少し誘いを掛けてみたりした
布団を伸ばす背中に寄り添って 耳元で囁いてみたところ
硬直したように動かなくなってしまった
どうやら言葉の意味が 理解出来なかったらしい
仕方がないので 顔を向けさせて もう少し露骨な言葉で
誘ってみたところ 何とも言えないような 情けない表情で
黙り込んでしまった

「・・・おいおい」
慣れていないどころか こりゃ怯えている? と判断して
オレは「冗談だよ」と彼を解放した
明らかに安堵した様子で 寝床を整え続ける彼を横目で見つつ
師匠はこいつとオレの どこが似ていると言ったのか
首を捻って考えた・・・



翌日の朝は早かった
聞けば 茶屋の他にも宮仕えの仕事を しているらしく
夕方までは茶屋を 『式』とやらに任せ 出仕しているという
事らしかった
ふと店を見ると 彼のペットだとばかり思っていた
白い仔狐が懸命に 店の『朝の仕込み』を 始めていた

出勤用の軍服(?)を見て少し驚いた
胸元や襟元に付けられている その勲章やら階級章やらの数に
・・・『お偉いサン』には とてもじゃないけど見えない
タイプだったから
年齢だってどうやら オレとは3つくらいしか 違わない
18歳という事だったから・・・

「吾自身は何の能力も 無いのだけれど・・・
何故か周囲の引き立てで 国王補佐の任を預かっている」
少し照れてそう呟くと 王宮を見てみるかと 尋ねられた
夜型生活者としては まだ眠たかったので 断ったが
彼の帰宅後に茶屋にやってた 国民だという者たちの様子を
見て 彼の国内での位置付けというものが 理解出来た
老若男女を問わずに 慕われているようであった
・・・けれど どことなく彼自身からは 疲れ切ったような
印象を受けたのだが

一泊の予定は二泊・三泊と延び
その間にオレは 菓子の作り方や絵画の基礎なんかを 教わり
一週間目にその城を旅った

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自己紹介
HN:
伽藺(カリン)・クイン
性別:
女性
職業:
アッシュ医師の妻/ナハリ軍務補佐官
趣味:
家事、お茶、お喋り
自己紹介:
医師アッシュ・クインの妻である柳の樹妖。
外見年齢は20歳ほど、実年齢は20代後半。
夫との間に男女の双子あり。

性格はおっとり。
行動は良く言えば優雅、悪く言えばどんくさい。
少し急ぐとすぐ転ぶ。
ネバーランド・ナハリ国の軍務省にも補佐官として所属している。

ユエルティートという名の少女を、小鳥と思い込んでペットとして飼っていたことがあり、
人の姿を現した今でも、娘代わりとして可愛がっている。
義兄にはウィルフェア氏とティーラ氏。氏の家族や同居人諸氏とも懇意で、何かとお世話になっている。

お茶が大好きでお茶菓子も好き。
甘党で大食漢。カロリーコントロールを言い渡されるレベル。
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