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うつつ世とまどろみの境を泳ぐ、とある妖の手記・・・らしいもの
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雨、雨、雨。
打ち寄せるのは、トオイキヲク。
眼前には白い水龍。
己の血と身を分けた存在でもある、水界の守護者。


『禁を・・・破りましたね・・・』
うつむき、唇を噛む白。




うるせぇ。
手前ェと親父と、そこの下等生物が作った『禁』なんざ、知るもんか。




その聖女ヅラには、正直いって反吐が出る。
何が共存か。
現実を直視するのが恐くて、逃げているだけの卑怯者が。
いいか、吾らには力がある。
人を喰らい畏れさせ、奴らの長となれる力が。

力のある者が。
弱者を支配して、何が悪い?

『私は・・・』

震える声。

『ひとと共存したかったのです。
これからの世の中で・・・それはきっと、必要となってくること』

振り絞るように奴が告げる。
ふん。
まさかこの吾が、コイツに説教されるようになるとはね・・・。
しかし。

「・・・はっ」

失笑を、禁じ得ない。
これから奴らは増え、この地に満ち、世の祝福を一心に背負う、・・・だろうから?
だから其らは誇りさえ捨てて、やつら低能なるものとの共存の道を選ぶのだと??

我らの妖界の直ぐ裏に位置するこの世界で。

「愚かよの、水神の仔。
其は『ひと』とかいう存在に、魂までも喰らわれてしまったようだな。
フン・・・艶っぽくなりやがって・・・、お前の男はもう居ないというのにな」

水龍の頬に一瞬、紅が疾る。

『何とでもお言いなさい。雷龍。私は人らとの共存の道を選んだのです』

白いその身が、1歩を踏み出してくる。

「それで。人を喰らう吾が邪魔だから、と?」

水龍は答えない。
かわりに毛羽立つ気配は、ヤツの周囲にいる取り巻きども。

『あなたの言葉を借りればね、雷龍』

静かにその指先を突き出し。封じの力持つ樹妖に合図を送る。

『それでもこうやって、私などに捕らえられている貴方は、弱者なのですよ』

瞳を細め。





封ずる。






白い、頬を伝うのは。
透明な水。

「ライ・・・」

ひざまづくは、水の龍。
かつては妖界にて皇女と呼ばれ。
皇子と呼ばれた雷竜とは、血を分け身を分け、理想を語り合った者。

「貴方の意見も間違いではない・・・ない、けど・・・」

封じられ。
今は小さな石塊となった、分身に。

「人は貴方が思っているよりずっと、力を持ち始めているのですよ。
いずれ彼らはこの世界の樹を伐り、山を砕き空を汚します。
妖界でさえ・・・、彼らがやって来れば、抑えることが出来るかどうか・・・。
ふたつの世界は。交わらないままに、しかし手を取り合っているのがいい」

だから、ね。いつか。
貴方の時代が来るまで。











・・・そっと、手に取り。胸にかき抱く、

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自己紹介
HN:
伽藺(カリン)・クイン
性別:
女性
職業:
アッシュ医師の妻/ナハリ軍務補佐官
趣味:
家事、お茶、お喋り
自己紹介:
医師アッシュ・クインの妻である柳の樹妖。
外見年齢は20歳ほど、実年齢は20代後半。
夫との間に男女の双子あり。

性格はおっとり。
行動は良く言えば優雅、悪く言えばどんくさい。
少し急ぐとすぐ転ぶ。
ネバーランド・ナハリ国の軍務省にも補佐官として所属している。

ユエルティートという名の少女を、小鳥と思い込んでペットとして飼っていたことがあり、
人の姿を現した今でも、娘代わりとして可愛がっている。
義兄にはウィルフェア氏とティーラ氏。氏の家族や同居人諸氏とも懇意で、何かとお世話になっている。

お茶が大好きでお茶菓子も好き。
甘党で大食漢。カロリーコントロールを言い渡されるレベル。
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