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うつつ世とまどろみの境を泳ぐ、とある妖の手記・・・らしいもの
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『 乱筆乱文よろしくご判読願いあげます。

      伽藺・クイン(旧姓:暮蒔) 拝 』




したためた手紙を配達屋に渡すと、伽藺は大きく一つため息をついた。

普段、利用している配達屋(メッセンジャー)には、今回は配達は頼まなかった。
それはこの手紙の受け取り主が特殊な場所に住んでいるから。
・・・住んでいる、のだろうか? 今でも??
それはわからない。何せもう20年以上の間、音沙汰さえない相手なのだから。

この手紙も。届くか届かないのか、それは・・・わからない。
それでも今の伽藺には、この手に縋るしか無かった。


世界の終焉。
こんなタイミングでもなければ、きっと頼りはしなかったであろう、自分の・・・・・・。
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紅の空に浮かぶ、闇色がかった雲。
そんな不思議な現象が頭上に広がった翌日。

大陸中には、早くもアース神殿の印が捺された、告知が撒かれていた。
その内容は・・・、ごく近い未来に訪れるであろう、世界を襲う大規模な死の予告。

民は驚き、そして、嘆いた。
絶望と嗚咽は世界を広く覆い、そしてその中で彼らは、行く道を決めねばならなかった。

時空魔法などを駆使し、移住できる可能性のある世界を、探そうとする者。
自棄になる者。散り華を咲かせようとする者。
そして静かに・・・世界と共に、醒めない死という眠りに、就こうとする者・・・。
威紺の訪問から、丸1日が経った。
雨が降っているので、子供部屋兼寝室にしている元・プレイルームで、やはり伽藺は紅茶を飲んでいた。
窓がとんとんとノックされ、開けるとそこには昨日振りの従兄の顔。

「従兄上・・・」

雨傘を窓に立て掛けると、ずぶ濡れの靴を脱ぎ捨てて、窓枠をひょいと飛び越える。
あまりに鮮やかな入室に伽藺は目を丸くし、慌てて室内用のスリッパを持って来る。

「おう、すまんな」
「玄関から入って来れば宜しいのに・・・」
「いやぁ。逢引がばれたら、何かとまずいかね、と思ってな」
「何が逢引ですか」

くすりと笑って伽藺が客人用のティーカップを出す。
深緑の、長い髪を無造作に結い上げた男が、見付けた時。
『彼女』はぼうっとした表情で、広い洋風庭園のガーデンチェアに、腰掛けていた。

見慣れた深緑。・・・男と同じ色の長い髪は、そのままに。
ただ、彼の見知った姿とは違う、完全なる『女』のいでたち。
未だ肌寒い春風にたゆたうショールは薄手の繻子で。
胸元や腰を強調した扇情的な、非日常的なドレスに身を包んでいることには、
最初に親友から聞いていたから男は驚かなかった。

「伽藺」

ぽぅっとした表情でティーカップを傾ける顔は、そこで初めて男の姿を見止め・・・。

「あ。・・・従兄上」

と、やはりぼんやりした笑顔を、返した。
その顔はやはり、子供の頃に見知った姿、そのままだった。
いろいろと変貌はしたが、その表情だけは昔のまま。

♥ Admin ♥ Write ♥ Res ♥
自己紹介
HN:
伽藺(カリン)・クイン
性別:
女性
職業:
アッシュ医師の妻/ナハリ軍務補佐官
趣味:
家事、お茶、お喋り
自己紹介:
医師アッシュ・クインの妻である柳の樹妖。
外見年齢は20歳ほど、実年齢は20代後半。
夫との間に男女の双子あり。

性格はおっとり。
行動は良く言えば優雅、悪く言えばどんくさい。
少し急ぐとすぐ転ぶ。
ネバーランド・ナハリ国の軍務省にも補佐官として所属している。

ユエルティートという名の少女を、小鳥と思い込んでペットとして飼っていたことがあり、
人の姿を現した今でも、娘代わりとして可愛がっている。
義兄にはウィルフェア氏とティーラ氏。氏の家族や同居人諸氏とも懇意で、何かとお世話になっている。

お茶が大好きでお茶菓子も好き。
甘党で大食漢。カロリーコントロールを言い渡されるレベル。
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