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うつつ世とまどろみの境を泳ぐ、とある妖の手記・・・らしいもの
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「・・・・どうして、こうなる」

(上体を反転させると、背に突きつけられた医師の頭を、
抱え込むようにぎゅっと抱きとめると、ふわりとした髪をゆっくりと撫でる)


「自分でもわからない感情を、人にぶつけるなと言いながら。
本当は貴方も、自分でもわからない感情で、いっぱいなのでは?」
「おい、俺の命令外の動きをするな、・・」
「それも昨日や今日じゃなくて。もっともっとずっと・・・前から」
「違う、俺の感情はいつでも、変わっていない」

(メスを入れた柳妖の胸元の、切り口から滲んだ血が、医師の褐色の頬を汚す)

「それを満たすのには、『支配』だけでは足りないことに、貴方も苛付いていたのでは、
ないの・・・ですか・・・?」

(血の乾かない傷ごと、医師の腕が白い身体を、強く抱きしめ)

「貴方にとってきっと今まで、他人なんて・・・『モノ』だった」
「俺以外の他人はモノだ、俺自身の意志が最も重要なのであって、相手の意思などは関係がない。
他人の意志を重要視して、裏切られることに怯えて暮らすなど、不毛の極みだ。
自分のみで構成される世界は完璧だ、そこに他人などという曖昧なカテゴリーを組み込む隙間など、
ない、だろう?」
「貴方は僕に信じて欲しいと思った。・・・それは貴方が初めて『欲した』他人の意思、
だったのではないでしょうか。
組み込んだ訳ではなく、いつのまにか忍び込んでいた、『他人』・・・」

(髪に指を差し込んだまま、額に小さく唇を当てる)

「俺をガキ扱いするな」
「していません。だって僕もね、今・・・きっとそう、なのですもの。
ガキが他人をガキ扱いしても、意味が無い・・・でしょう?」
「ああ、貴様はガキだな? 俺などに自らの存在価値を、委ねるほどだ」

(抱き合ったまま、こてんと寝転がり)

「気に食わないなら殴ればいい。こんな煩い人形、いらないなら殺せばいい。
「殴るが殺しはせん。貴様には一生俺の傍に、いてもらわねばならんのだからな」
 

(瞬きもせずじっとその、怒っているような泣きそうなような、黒い瞳を見つめる)

「・・・貴方の名前を教えてください」
「名前だと?」
「ええ。貴方が名乗ることを拒否する、その名前」
「名前など知っても意味はないだろう」
「その名を僕が呼んでも、貴方にとっては意味が無い?
僕が貴方にとって特別なら、貴方にとっての『特別なもの』に僕が触れたら、
何かが変わるかも知れない」
「・・・そんなに見るな(目逸らし)」
「『言霊』を信じる民族である僕はそう考えます」
「ふん、知りたければ、教えてやってもいいが」
「・・・・・・・」

(困っているらしく、医師ががりがりと頭を掻き)

「『   』・・・と、昔は呼ばれていた。教えたのは特別だ、この名で呼べば殺す。
・・いや、殺しはせんが半殺しにする」

「・・・・・・。・・・お慕い申して居りますよ、『   』」

「(何故かかぁっと赤面し)呼ぶなと言ったばかりだろうが」
「人前では呼びません、僕だけの宝物にしますから。・・・いけませんか? 」
「貴様に呼ばれると、どうしていいか、わからなくなる」



「ありがとう。貴方の『心』を、見せてくださって。
お返しに僕は・・・何をすればいい?」
「別に何もせんでいい。いつも通りであればいい。
ただ、引篭もって鬱々とされていると、気分が悪いから、やめろ」
「・・・僕も考えたのですよ。貴方が昨日あんなに、怒った理由。
まぁその、一人で考えたのでは、ないのですけれどね」

(体を起こし、実験台に腰掛けて)

「ほう、誰と考えていたのだ?」
「そ、それは、その。言い・・・ません(赤)」
「何故言えん? ・・・言え(メスを手に取りつつ) 」
「え、いや・・・その、えっと・・・。あ、AYAKI殿、・・・です。
でも、あの方に付き合っていただかなければ、この結論には達さなかったと思います。
あとは、大根とつくねとお豆腐のお話を少々・・・(照)」
「アヤキ? 本当に本当か?
ならば紛らわしい、言い淀みをするな(メスを地面に叩き付け)」
「 どうしてそんなところで嘘をつく必要があるんですかぁ」
「他の男と会っていたのを隠している恐れもある」
「し、信じてないじゃないですかぁ!!」

(指差し叫ぶ妖の声に、眉根を寄せて、耳に指を押し込む医師)

「何を言う、信じているぞ。
貴様の精神の薄弱さを鑑みれば、信頼も時と場合によることは、自明の理だ」
「は! ・・・というか・・・!!
何で男性と一緒にいたら疑うのに、女性と一緒にいても疑わないのですかっ!
間違いが起こるとしたら、そっちの方が可能性高くないですか!? 普通に考えて・・・!!」
「何を言うかと思えば、はっはっは! 貴様が女と? ・・・ありえん。
貴様を押し倒すような女がいるのならば、むしろお目にかかりたいものだ」
「Σというか、僕が押し倒す可能性は!?; 」

(医師は妖の疑問を、まるで何も聞かなかったかのように、黙殺し)

「なんだか疲れた、もう寝室に戻るぞ」
「戻ってしまうのですか?
それは淋しいですけれど、疲れたのなら、仕方ありません、ね。」
「・・・俺の寝室に来ても構わんが」
「は。では・・・お邪魔致します(微笑)」

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確かに…
カリン君が押し倒すよりも、妾が押し倒す方が自然?(笑)
某楼主 2010/04/22(Thu)21:25:38 編集
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自己紹介
HN:
伽藺(カリン)・クイン
性別:
女性
職業:
アッシュ医師の妻/ナハリ軍務補佐官
趣味:
家事、お茶、お喋り
自己紹介:
医師アッシュ・クインの妻である柳の樹妖。
外見年齢は20歳ほど、実年齢は20代後半。
夫との間に男女の双子あり。

性格はおっとり。
行動は良く言えば優雅、悪く言えばどんくさい。
少し急ぐとすぐ転ぶ。
ネバーランド・ナハリ国の軍務省にも補佐官として所属している。

ユエルティートという名の少女を、小鳥と思い込んでペットとして飼っていたことがあり、
人の姿を現した今でも、娘代わりとして可愛がっている。
義兄にはウィルフェア氏とティーラ氏。氏の家族や同居人諸氏とも懇意で、何かとお世話になっている。

お茶が大好きでお茶菓子も好き。
甘党で大食漢。カロリーコントロールを言い渡されるレベル。
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