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曾祖母の訃報を告げる従兄の訪問。
『次は懐かしい顔を連れて来る』と言ってはいたが、何かと忙しいのだろう・・・あれから音沙汰らしきものは無い。
渡すべきものというのは気になるが、伽藺も伽藺でやらなければならないことは、多かった。
そうこうしているうちに、流れるように月日は経ってゆく。
世界の終わりに際して、どう身を振るのか。
答えはある日、思考の海から浮上した夫より、言い渡された。
「滅びゆく世界と共に、運命を共にしよう」・・・と。
その結果に異存は無かった。もとより生き疲れていた命だ。
夫と出会ったことで、少しは力を与えられたけれど。それも、夫の在るが故のことだった。
ならば失う時もまた、彼の指示に従おう。
許されない罪人だと思っていた。死んだような生き方の中に、最後の瞬間だけ幸福の灯が点った。
それだけでもう、生まれてきて良かったと、そう思うだけの価値があるはずだ。
本当を言えばもっと長く生きて、子供たちの成長や将来を見届けたかった。
彼らが巣立ったあとの屋敷の中で、まるで老夫婦のような穏やかさで、淋しいですねぇなどと零してみたかった。
けれど。 夫は・・・、・・・多分・・・。
口ではどうと言っても、この世界を愛していたのだ。
そしてこの世界に愛されていないと思い込んでいた。
ゆえに彼もまた、生き疲れていたのだ・・・。
なら、淋しがりで不安がりな、あのひとを。もう独りにしないのが、妻たる自分の務め。
涙が出ないといえば嘘になる。
けれど伽藺は決めた。自分はあのひとのもの、であり。
「・・・私はもう、『主君』を、裏切らない」
◆
「ココが目的の、ハウスかぁ」
幼い声が、海沿いの椰子の木陰からぽつりと、呟く。
いやどうやら、声が高くさらに片言なので、幼く聞こえるだけのようだ。
砂を踏んで現れた身体は、すらりと成長した少女のものだった。
「ココに住ンでる『カリン』を、カルタの村に連れて行けば、イインだネ」
すらりと長い手足は浅黒く、潮風に靡く髪は明るい亜麻色。
フード付きのくたびれた外套で身を覆っているから、どんな面立ちをしているかは見た限りではわからない。
「どンなヒトかな、カッコイイといいナ、ウシシシシッ」
自身を『カルタ』と呼んだ少女は、裸足でたんと砂を蹴ると、常人では信じられないほどの跳躍力で、
高くそびえる屋敷のアーチ門を飛び越えた。
外見年齢は20歳ほど、実年齢は20代後半。
夫との間に男女の双子あり。
性格はおっとり。
行動は良く言えば優雅、悪く言えばどんくさい。
少し急ぐとすぐ転ぶ。
ネバーランド・ナハリ国の軍務省にも補佐官として所属している。
ユエルティートという名の少女を、小鳥と思い込んでペットとして飼っていたことがあり、
人の姿を現した今でも、娘代わりとして可愛がっている。
義兄にはウィルフェア氏とティーラ氏。氏の家族や同居人諸氏とも懇意で、何かとお世話になっている。
お茶が大好きでお茶菓子も好き。
甘党で大食漢。カロリーコントロールを言い渡されるレベル。