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うつつ世とまどろみの境を泳ぐ、とある妖の手記・・・らしいもの
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やがて充分に暖まり、さっぱりとして風呂から上がると、
屋敷中に旨そうな肉やスパイス、フルーツの匂いが充満していた。
歩くたびに風を孕んでは逃がす部屋着を靡かせ、使用人たちの案内の元に食堂に向かうと、
そこには南国情緒の溢れる豪華な宴席が設けられていた。
 
カルタやカルラも並んでおり、また他の姉妹かと思われる者たちも、きちんと並んで座っている。
上座には、カルタより少しだけ年長に見える、伏せ目がちの無口そうな少女。
10歳くらいだろうとおぼしき、大きな瞳が愛らしい少女。
補助具付きの椅子に埋まるように座っている、まだ5~6歳かと思われる素直そうな男の子。

アッシュ達も案内されて席につくと、メインディッシュらしきやたら大きな皿が、
数人がかりで運ばれて来る。

「ふふーん♪」

何故かカルタが得意げな顔をしている。

客人二人のグラスに、果実酒のようなものが注がれ、そしてメインディッシュの蓋が取られる。
カルタは胸を張ってふんぞり返り。
他の姉妹たちはこともなげにその中身を眺め。

そして、伽藺は。

 

 

 

 

 


綺麗な南国の花に彩られ、食欲をくすぐる香草の香りを纏った、『それ』。
・・・全長2~3mはあろうかという、巨大なトカゲの姿焼きを見て、顔色を蒼白にさせていた。

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案内されるがままに、高級住宅地を通っていると、大きな噴水のある市民公園に出た。
噴水の中には水着を着た老若男女が戯れ、ちょっとしたプール扱いになっているようだった。
もともとはカテリーンが発見した小さな水場から発展し、しっかりとした地下水脈があったから、
街にまでなった場所らしい。

「そう・・・。この街を造るための、水場を発見したのが母上、なのですか・・・」

『夢見師』という存在が、どのようなものなのか、伽藺にはあまりわかっていなかった。
占い師のようなものだろうか、と予想はしていたのだが・・・。
どうやら思っていたよりも、具体的な効果でもって、人々を導くようだ。

「たしかにこのような、季候風土の厳しい土地ならば、人に見えないものを視る力や、
未来を予測する力は重宝されるのでしょうね」

「・・・かり・・・ん?」

鈴を振るかのような。
細く高いと夫に評される、女性時の伽藺の声によく似た。
しかしそれよりも、さらに頼りなげな声が問い掛ける。

恐る恐ると、そして・・・おずおずと。
ベッドの天蓋の中で、小さな影がもぞりと起き出す。

その姿は明かり取りの窓からの間接光に照らされ、まるで影絵のように見えていた。
小さな、とても小さな影だ。小柄なんてものではないかも知れない。
伽藺は固まったように動かない。返答がないことを不安に思ってか、声はもう一度名前を呼ぶ。

衛士長に肩を叩いて促され、ようやっと伽藺は足を進めた。

アッシュは目前に広がる街、そして白皙の建物へと視線を巡らせた。

「なんと、白い」

砂の舞い白日の照りつける、夢想的な光景に感嘆するように呟き、
そっと妻の手を握り締めた。
不安になっていたり、怯えているのではないかと、少し心配になったからだった。
それほどまでに、魔法陣に乗ってからの伽藺は、言葉をひとつも発さなかったから。

「カリン・・・? カンチガイ・・・??」

黒髪の少女が少し警戒の構えを解き、目前で屋敷の中に向かって叫んだ大柄な男に、
観察する視線を送った。
その表情や声音から、少なくとも『カリン』に敵対する者ではないと、踏んだからだ。

「カルラは、別ニ利口でハナイ。
単ニ、カルタの知性が、砂トカゲと同等なだけダ、です」

ぽそりと呟くと、言われた当のカルタは愉快そうに手を打ち鳴らし、
「おお! 砂トカゲ美味いな、カルタの好物ダ!!」と上機嫌に喜んでいた。
どうやらこの随分と年下の少女に、馬鹿にされたことには気付いていないらしい。

「お客・・・様? はい、ただいま参ります・・・けれど、・・・何方??」

家事用のサンダルに足を引っ掛けて、ゆっくりとした動きで出てきた伽藺の姿に、
少女たちは揃って目を見開いた。

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自己紹介
HN:
伽藺(カリン)・クイン
性別:
女性
職業:
アッシュ医師の妻/ナハリ軍務補佐官
趣味:
家事、お茶、お喋り
自己紹介:
医師アッシュ・クインの妻である柳の樹妖。
外見年齢は20歳ほど、実年齢は20代後半。
夫との間に男女の双子あり。

性格はおっとり。
行動は良く言えば優雅、悪く言えばどんくさい。
少し急ぐとすぐ転ぶ。
ネバーランド・ナハリ国の軍務省にも補佐官として所属している。

ユエルティートという名の少女を、小鳥と思い込んでペットとして飼っていたことがあり、
人の姿を現した今でも、娘代わりとして可愛がっている。
義兄にはウィルフェア氏とティーラ氏。氏の家族や同居人諸氏とも懇意で、何かとお世話になっている。

お茶が大好きでお茶菓子も好き。
甘党で大食漢。カロリーコントロールを言い渡されるレベル。
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